「お母さんとしては、お子さんを幼稚園に通わせたいですか?」
この言葉は、一生忘れられない主治医の言葉です。
娘は持病があります。調子が良いときは普通に生活ができますし、見た目には判断できません。ただ、調子が悪いと点滴治療が必要になります。幼稚園に通うことで、感染リスクも高くなりますし、病状を悪化させる可能性も高くなります。そんな娘が3歳になってそろそろ集団生活をと考えた時、尊敬する主治医の先生はこう語りました。
「医者としては通わせたくありません。でも、お母さんはそれでいいですか?お母さんとして、お子さんを幼稚園に通わせたいですか?」
そう、問われたとき、さすがに迷いました。けれど、そこはさすが尊敬する主治医。親の覚悟を再確認させる手順でした。幼稚園に通うことは、大きなリスクを生じます。でも、小学校に通う前の幼児期をどこにも通わせず家で一人で過ごすことが、本当に良いことか。どっちのリスクをとるか考えるきっかけをいただきました。
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同じ病気のお子さんの昔の生活は、病気の予防に専念しすぎるあまり、精神的にも発達できず他の病気も併発するような不幸な状況に陥る例もありました。風邪とは違い原因がはっきりしない病気は、いつ、どのように悪くなるか分かりません。だからこそ、気を付けていかなくてはならないものですが、気をつけすぎることが娘の発達に本当に良いものか。それより、一生続くであろう病気と闘える精神力を高めることの方が重要なのではないかと思うようになりました。
前回も書きましたが、病気予防と病気再発のリスクを天秤にかけたときいつもこの言葉を頭に浮かべます。
教育において第一になすべきことは、道徳を教えることではなく、人生が楽しいということを体に覚え込ませてやることなのである。 永井均(折々の言葉 2015/05/14)
このあと、鷲田清一さんは続けてこう書いています。
生きることは楽しいという肯定感が底にないと、自分の人生をしかと肯定できない。
先におこりうる病気への漠然と不安が強いあまり、日々の楽しいことを体験させないまま生活させるのは娘にとって病気再発より悲しいことかもしれない。そこで、心から楽しいと思える日を1日でも多く与えたくて娘を通常幼稚園に通わせることにしました。(2年保育の幼稚園ですが)
もちろん、幼稚園の先生方にお願いしたいことはたくさんあります。けれど、それにも限界があります。幼稚園に通わせて万が一再発したら、、、それは幼稚園のせいではない、運が悪かったと思うようになりました。幼稚園に通わせること、病気をもつ親にとってそれは親の覚悟の問題なんだと思うようになりました。そういう、気持ちになれたのは、主治医とこの言葉のおかげです。
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病院で出会った方の多くは赤い手帳を持っています。娘はそこまで病気が進行しているわけではありません。幼稚園に通える可能性があるだけ娘は本当に幸せです。でも、いざ同年齢のお子さんの中に入ると幼稚園、保育園に通うお子さんの方が断然多く娘のような状態は少数派で不安になります。
幼稚園入園前いろいろ検索し、同じ状況の方を探しましたがなかなか見つかりませんでした。そこで、この記事を書きました。同じように病気のせいで幼稚園に通えるかどうかの判断に迷う親御さんがどれくらいいらっしゃるでしょうか。どうか、この記事にたどり着く方が少なくありますように。
けれど、お子さんが病気のために集団生活をどうするか迷う方がこの記事にたどり着いたとき、何か考えるヒントになれば幸いです。
*もう一つの日記では、なるだけ病気には焦点を絞らず書いていますが、同じ娘の日記です。