採血。
辛いですよね。子どもが辛そうだと親も辛い。特に、子どものこの世の終わりのような悲鳴と泣き声は胸が苦しくなります。
今回はその内容に関連して、小さな子どもがどうやって採血が上手にできるようなったか、母である私が1~5歳までの娘の様子を観察してきたことをまとめてみました。
毎回採血に苦しみ悩んでいた時に、こんな記事があったらよかったなという思いからダラダラ長い文章になっています。同じように、毎回採血に悩まされるご家庭の参考になれば幸いです。
娘の疾患について
と、その前に、娘の病気の治療・検査の頻度とざっくりとした内容をまとめておきます。
- 小児慢性疾患
- レントゲン・エコー・採血・心電図が主な検査
- 採血は、月に1回以上(調子の悪さによる)
- 年に数回入院点滴治療
- 知的レベルはおそらく平均
慢性疾患を患っているので定期的な採血は欠かせません。まるでオムツが外れる子どもと同じように、成長とともに採血が上手になりました。その変遷が辛いけれど興味深いものがありました。
採血の体勢
年齢・状況によって採血の体勢が違います。その様子をイラストでまとめてみました。
■ぐるぐる巻き
バスタオルなどでぐるぐる巻き。赤ちゃん時代によくやってもらいました。私が付き添うことなく、先生や看護師さんにお願いしていました。
■おさえこみ
バスタオルを使わないときは、私が上から覆いかぶさって抑え込みました。3,4歳にこのやり方が多かったです。知らない人におさえこまれるくらいなら、お母さんの方がいいという娘の希望からこうなりました。
■コアラ抱っこ
注射が見えないように私が抱っこして行いました。
■前向き抱っこ
コアラ抱っこが上手になった頃、私の手をベルト代わりに腰に巻いて自分の足で娘の足をブロックするこのやり方で挑戦しました。
■並んで座る
これぞ、子どもの採血の理想レベルだと思っています。ここまでできるようになれば、かなり安心です。隣に座って、娘の手を握ってあげました。
■手のおさえ方基本
最初は、ABC三人は絶対必要でした。
慣れてくると、ABを一人、注射針をもつ方一人と計二人で行っていました。
年齢別採血の様子
■1歳
- スタッフ人数→ 3人
- 母の付き添い→ 不可
- 娘の様子→ 処置室に入った瞬間から、激しいぎゃん泣き
- 体勢→ ぐるぐる巻き
ぐるぐる巻きにされて、採血をされていました。小さくて力がない分、体を拘束することは楽にできているようですが、血管が細いせいで採血や点滴は難航していました。
採血の意味が分からないので処置に入るまではニコニコだし、終わった後の立ち直りも早かったです。
【母として気を付けたこと】終わった後全力で笑顔で抱きしめることを心がけていました。
■2歳
- スタッフ人数→ 3人
- 母の付き添い→ 基本可 暴れてどうしようもない時だけ不可
- 娘の様子→ 徐々に泣くことがなくなり穏やかに採血ができるようになる
- 体勢→ ぐるぐるまき コアラ抱っこ
突然、泣かずに穏やかに採血ができるようになりました。慣れてきたせいか、私の膝に座って上手に採血ができる日が増えてきました。処置室への抵抗もなくなってきました。
【母として気を付けたこと】言葉や私の感情を読み取るようになってきていたので、公園に行くような楽しい雰囲気を作りながら処置室に連れていくことを心がけていました。
■3歳
- スタッフ人数→ 3人ひどいとき4人
- 母の付き添い→ 基本可 暴れはじめたら私がベッドの上で娘を全力で抑え込む
- 娘の様子→ 再び処置室に入ると泣くようになる
- 体勢→ ぐるぐる巻き こあらだっこ おさえこみ
2歳の時には上手にできていた採血が突然できなくなってしまいました。きっかけは、先生が変わり、最初から母子分離の処置室でバスタオルでぐるぐる巻きにされたことでした。でも、これはあくまできっかけにすぎず、この頃にイヤイヤ期が始まったのでそちらの原因の方が大きいと思っています。治療に対してすべてがネガティブ感情を露わにし大変でした。エコーやレントゲンまで泣いて大暴れでした。本来なら「お母さんは外で」というところですが、あまりにもひどいので看護師さんや先生と相談し、私が娘の上に覆いかぶさって全力で娘の手足をブロックしていました。つまり、私、主治医、看護師二人計4人で採血していました。娘が言うには、同じようにブロックするならお母さんが良いとのことで。
ただ、この頃は辛い記憶もすぐに忘れられるし、先のことも考えることがないのである意味楽でした。
【母として気を付けたこと】医者・看護師を尊敬していること、信頼していることを普段の生活からアピールしていました。でも、この頃の注射嫌いは半端なかったので、できるだけ辛い時間を短くさせるため、心を鬼にして自ら全力で羽交い絞めにしていました。
■4歳
- スタッフ人数→ 3人 ひどい時4人
- 母の付き添い 基本可 暴れはじめたら私がベッドの上で娘を全力で抑え込む
- 娘の様子→ 泣かずに採血できる日はなかったが、少しずつ暴れる日も減ってきた
- 体勢→ コアラ抱っこ おさえこみ
3歳の頃より少しは楽になったような気がします。でも、それより厄介なのは、「明日採血やだな~」「レントゲンが怖い」というように、事前に起きることを心配して夜眠れなくなることです。または、夜中起きだして泣き始める、という精神的なダメージの方が辛かったです。
【母として気を付けたこと】3歳頃と同じ
■5歳
- スタッフ人数→ 2人 調子が良いと1人
- 母の付き添い→ 基本可 暴れてどうしようもない時だけ不可
- 娘の様子→ 泣いて採血をする日がかなり減ってきた。
- 体勢→ コアラ抱っこ 前向きだっこ 並んで座る
採血の上達がもっとも顕著だった1年でした。最初はコアラ抱っこでも結構泣いていました。そして、前向き抱っこでできるようになったと思ったら、すぐ並んで座ってできるようになりました。
採血そのものはずいぶん楽になったようには見えましたが、治療へのマイナスな気持ちを引きずることが多く過呼吸のような症状が現れ不安でした。ただ、レントゲンやエコーなど少しずつ上手くできるようになった検査治療が増えてきて自信にもつながっているようです。
【母として気を付けたこと】以前より上手にできるようになったことを繰り返し娘に伝え、自信をつけさせていきました。
母子分離の処置について思うこと
■1・2歳
振り返ってみれば、1,2歳での母子分離での処置はあまり大きな問題はなかったように思います。ものすごーく泣いて暴れて可哀想な感じがしますが、終わった後はケロっとしていますし、私がいてもいなくてもそれほどの違いはありません。子どもの問題というより、母の気持ちの問題の方が大きいかもしれません。
■3歳
難しいと感じたのは、3歳以降です。状況を把握する力もついてきますし、想像力たくましくいろんなことを考え、恐怖で体が完全にこわばってしまいました。注射が痛いから嫌だというより、すべてが怖いから嫌だという感情の方が圧倒的に強い印象でした。
1・2歳ころは、処置室に連れていくまでは簡単でした。3歳過ぎると、部屋に入れるまでも本当に大変です。
■4・5歳
小さい頃は、注射が終わればもう嫌なことは過ぎ去ったという、さっぱりした感じがあったのですが、4・5歳では急にその時のことを思いだして泣き出したり情緒が不安定になることがありました。
そんな経緯もあるので、採血以外の検査でも恐怖心が現れるお年頃だったら母もそばにいてあげて、抱っこするなり手を握るなり、体に触れて気持ちを落ち着かせることは有効ではないかと思います。
ただ、
子どもによって全然違うと思います。普段から娘は私から離れられない子だったので、知らない場所で母子分離になることへの抵抗はより激しいものだったと思います。これが、普段から平気で子どもの集団に一人で入っていけるようなお子さんだったら母子分離だろうが、そばに付いていようが、そんなに変わらないのかも。よく言われるように、母は優しく待ってくれる安全な存在である方が良いのかもしれません。
また、
娘のように、日常的に検査・治療が続く場合と、そうでない場合でも対応が違うのかも。対応に慣れない親がそばにいておろおろするより、慣れたスタッフの方にお願いして力まかせでサクッと終わらせる方がいいのかもしれません。
「こどもがかわいそう」と泣き出してしまうくらい感情が不安定な時は、そばにいない方がいいです。子どもの恐怖心と不安感を増幅させます。それより、笑顔で迎えられる心の準備を離れた場所でしておいた方が良いと思います。とはいっても、急に泣けてくる時だってありますよね。そんな時は、泣いた日のことを忘れましょう。
泣かずにできるようになったきっかけ
4歳くらいの時には、採血を泣かずにできるような日は永遠に来ないんじゃないかと思っていましたが、5歳になり上手にできる日が増えてきました。そのきっかけは、
- たまたま短い時間でサクッと採血ができた。
- 慣れている看護師さんの採血でリラックスしてできた。
泣かずにできるようになったきっかけは、ある程度の痛みに対して我慢できるほど成長した頃と、たまたま上手に採血してもらえたタイミングが合っていたのではないかと思います。しかも、その時は、いつも優しく楽しく声をかけ続けてくれる看護師さんが担当だったことが恐怖心をやわらげたんだと思います。一度できたことは自信につながります。小さい頃から愛情をもって声をかけ続けてくださった看護師の皆さんの力は本当に大きかったです。
おわりに
採血の技術については分かりません。でも、いろんな方に採血していただいて分かったのが、技術の問題だけでなく患者の体調によってもとりやすい時とそうでないときがあるということ。めちゃめちゃ採血が上手!と感動した先生が、次には全然うまくとれないなんてことはザラです。
冒頭に紹介した記事にも書かれていましたが、保護者の目がプレッシャーになるのは本当に良くわかります。だからこそ、付き添っている時にうまく採血ができないときは、「そういうこともあるある」と子どもの前で笑い飛ばし、注射針をもつ先生や看護師さんをリラックスさせるくらいの余裕をもってのぞみたいと思っています。結果的にその方が、成功率もあがり子どものためになります。
小学6年生くらい、中学生くらいのお兄ちゃんお姉ちゃんでも、採血が嫌で脱走する場面に出会ったことがありました。精神的なものが深く関わっているので、こうすればできるようになる!という分かりやすいメソッドはないと思います。この観察記録は、たった一人だけのものですが、同じように採血で苦労されている方の考えるヒントになれば幸いです。
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おまけ~小児科の先生の嬉しかった神対応
娘は多くの小児科の先生にお世話になっています。いろんな先生に命を助けていただいている実感があります。その中でもあ~この先生に担当してもらえてよかったというエピソードを紹介します。
- 私の意識を変えた主治医の言葉「お母さんを患者の母とは思っていません。我々病院スタッフの一員だと思っています。」
- 大暴れした娘の採血が終了しても、それが終わりではなく永遠に続くであろう家族の悲しみに寄り添ってくれた。
- 病気に重さによってどんな病気の患者も分け隔てなく接してくれた(命がけの手術をする患者と同等に接してくれた)
小児科の先生は本当に大変ですよね。病気の症状が重い時は私もイライラしてしまいます。そんな私たち患者家族の感情をブラックホールのよう吸い込み、丁寧に説明してくださる先生には頭が下がる思いです。なんて人間性が問われる職業なんだと思います。心から応援しています。
*このブログでは娘の病気をメインに書いていますが、別のブログ▼では娘が調子よく楽しく過ごしている様子を切り取って記録しています。